冷媒解説

R32ってどんな冷媒?

どんなところに使われているか

R32は主に家庭用エアコンに使用されています.

従来,家庭用エアコンの冷媒としてはR410Aが主に使用されていましたが,R410Aは地球温暖化に対する悪影響が大きいという課題がありました.

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そこに登場したのがR32です.
特にダイキン工業では、積極的にR32を冷媒としたエアコンを開発しています.

調べたところ,ダイキン工業におけるR32を冷媒としたエアコンの開発状況はこのようになっていました.
・2012年 世界で初めて家庭用エアコンの冷媒としてR32の採用を発表
・2013年 R32を冷媒とした、オフィス店舗用エアコンを発表
・2018年 R32を冷媒とした、大型のオフィス店舗用エアコンを発表

【外部リンク】新冷媒 R32 世界で初めてHFC冷媒R32を採用

家庭用⇒店舗用⇒大型店舗,と徐々にサイズアップしていることがわかります.

大型のものほど多くの冷媒が必要で取り扱いが難しいため、小型のエアコンから商品化することでノウハウを蓄積し,次いで店舗用エアコンに着手していったと考えられます.

R32は至る所で「新冷媒」と言われていますが,ここでいう”新“とは、新しく発見されたという意味ではありません.
R32自体はその昔から存在していましたが,エアコン用の冷媒としては使用されていませんでした.それが,最近になり冷媒として使用され始めたので,「新冷媒」と宣伝されているわけです.

環境負荷(GWP,ODP)

R32のGWP(地球温暖化係数)は675,
ODP(オゾン破壊係数)は0です.

従来使われてきたR410AやR404Aに比べれば,
GWPはかなり低いですが,それでも基準としているCO2の675倍あります.

R32のGWPは現状の冷媒ラインナップの中では低いと言うことができますが,
将来的には規制されて使用できなくなることが十分考えられます.

ODPについても0ですので,問題ありませんね.

【外部リンク】特定フロン(CFC/HCFC)およびフルオロカーボン類の環境・安全データ一覧表

安全性(毒性,燃焼性)

R32は,ASHRAE34規格ではA2Lに属します.
つまり,毒性はないのですが,微燃性です.

特徴(メリット,デメリット)

R32のメリットのひとつは,従来ルームエアコンや店舗用エアコンに使われていたR410Aと比較したときに,GWPが低い(約1/3)ということが挙げられます.

また,R32は他の冷媒と比較して蒸発潜熱が大きいという特徴があります.
(ちょっと説明をとばします・・・)
蒸発潜熱が大きいと,機器をコンパクトに設計することができます.
そのため,従来のエアコンよりも小型で価格の安いエアコンが登場する可能性があります.
(もちろん以下に述べるデメリット解消のためのコスト増とのかねあいですが)

R32のデメリットは微燃性です.
なんと言っても微燃性です.

燃えない訳ではありません.
当然使用に際していろいろな面から危険性の評価をしなければならず,
このようなリスクアセスメント,安全性の評価が行われています.

これ自体はちょっと堅苦しい文献なので,
詳しい人だけどうぞ.

【外部リンク】微燃性冷媒リスク評価研究会

【外部リンク】燃焼性を有する冷媒の安全性評価プロジェクト

このように,R32はかなり慎重に評価された上で商品化されたものです.
しかし当然ながら反対する人もいますので,反対派の意見も載せておきます.

【外部リンク】フッ素を含む新しい冷媒ガス(HFC32)の危険性の問題

化学的にはどんなものか

R32はHFC32と言ったりします.また,化学的にはジフルオロメタンといいます.簡単に以下の表にまとめておきます.

名称 R32
その他の名称 ジフルオロメタン
GWP 675
ODP 0
安全区分 A2L
分子構造

【外部リンク】ジフルオロメタン

その他(感想)

この記事,やけにダイキン工業さんへのリンクが多いんですが,これは,ダイキン工業がR32を製造しているためです.なので情報を探すと自然とダイキン工業のwebページに行き着いてしまうですよね.

ダイキン工業の宣伝や広告とは一切関係ありませんのであしからず.

それと,クルマ好きにしか分からないネタですが,R32で検索をかけると,ほぼスカイラインGTRが出てきますね.